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高級スプーン似の部屋


[408] 空気はおいしいものなのか
詩人:高級スプーン似 [投票][得票][編集]

スーツがない
ネクタイがない
いつも
ネクタイを締めてくれる
妻がいない
ワイシャツがない
下着がない
そういえば
パジャマも着ていない
確かめるための
鏡もない
リビングがない
ていうか
寝室がない
キッチンがない
玄関へと続かない
出掛ける家がない
すやすや眠る
娘はどこへ行った?
あたりを見回すと
風景がない
見回す首もない
手首もない
両手がない
これじゃあ
ネクタイを見つけても
結べない
そもそも
歩く足がないから
会社に行けない
妻も娘も
探しに行けない
参ったな
これが
悪い夢なら
まだ良かったんだが
あいにく
俺には夢がない
希望がない
かといって
絶望も出来ない
考える頭もないから
だとすれば
あれれ
俺がいない
というより
誰もいない
いや
最初から
誰もいなかったのか
始まりも何もない
だから
自分を探す
俺がいない
それなら
もう
苦しまないですむ
はずなのに

最初からないのに
なくならない
そして
誰もが妄りに想う
エアー

ところで
空気は
おいしいものなのか

あなたは知っていますか?

2012/05/25 (Fri)

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