詩人:高級スプーン似 | [投票][編集] |
忙しない日々に
手持ちぶさた
この手が塞がっていたから
掴めなかったもの
振り返れば
少しは
残っているだろうか
そうだとしても
根性なしの僕は
前だけを見て歩く
僅かな希望も
抱く勇気がなくて
開いた両手に目を落とす
人に叱られたり
人に誉められたり
誰かと笑い
喜びを共にしたり
ひとりじゃないから
出来るんだよな
当たり前のことに
気付いたのは
ひとりになってから
この先
訪れるかもしれない幸せも
拒むように
人ごみを押しのけて
前へ
多忙な毎日の幕間に
足を止め
誰もが悲しんだとしても
空いた両手に何を落とす?
ぐっと堪えて
歩みを速める
別れを告げる人たちの
すすり泣く声
乾いた両手を握りしめ
ひとり列を抜けた
先に進むよ
振り返っても
当然
君はいないから
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