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高級スプーン似の部屋


[451] 塗り絵のカラス
詩人:高級スプーン似 [投票][編集]

輪郭だけ描かれた
カラスに着ける色
大人になれば皆が皆
黒を選んで塗り潰す

それを知らずに私
手渡された紙を前にして
軽くパニック
カラスが何かすら
わからなくなっていた

この辺は赤で
こっちは青か
そもそも青ってどんな色

誰もが正解するような
間違えようのない問題
答が提示されている
そう言っても
過言ではない局面で
誰も予想もしなかった
方向へと向かう指先
悪手とすら呼ばれず
無言の静寂が訪れる

私の思考は
理解されないし
皆の思考を
理解できずに
震える手を隠し
意味なく笑った

どうして
ここに居るのかも
わからなくなっていた
皆の笑顔が笑顔なのかも

黒く染まった洗面台
化粧を落とした顔を見る
無彩色の肌に触れ
カラスが何かを思い出す

なんだ
引っ掛け問題だったのか

色を塗る必要はなかった
白紙の時点で
完成していたのだから

2012/12/14 (Fri)

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