月夜の丘に佇む漆黒の猫。
「寒くないのかい?」
と聞いたら
「月が暖かいからね」
とひげを風になびかせて呟いた。
瞳の行く先は遠い望郷。
風が凪ぐ。ひげが凪ぐ。
ぼんやりとした月は猫の背中を撫でるように照らす。
だから毛布をかけてあげました。
それでも猫は身じろぎ一つせず。
海の向こうを見つめていました。
駆られるのはあの地への思いでしょうか。
幾多の災難にあっても焦がれる思いでしょうか。
僕は羨ましく思いました。
月は遥か遠くから。
猫は海を渡れるのでしょうか。
2009/01/25 (Sun)