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朱雀の部屋


[11] 空の色が青いのは
詩人:朱雀 [投票][編集]


空の色が青いのは 一体 如何なる所以でしょう?

「それはつまり

『レイリー散乱』なる現象が大気の向うで忙しくおこり

7つの色の可視光のうち最も多く地上に着くのが

青い光という所為なのだよ」


ほつれた糸をツイとひっぱり

見過ごすには大きすぎる穴の空いたポケットに

無理矢理右手を突っ込んで 物知り博士は言うのです


だけども博士

見上げた空が青いというだけで どうして心は晴れるのでしょう?

こごり雲に覆われた鈍い空が長く続くと

青い空が恋しくなるのは果たしてどういう訳でしょう?

例えば空が黄色でも同じ思いになるのでしょうか?


「いやはや それは科学ではなく・・・」

皺くちゃになったハンカチで萎びた顔を拭きながら 

博士は扉を閉めました

遠くて見えない光の事は分るのに?


「それが浪漫というものなんだよ」

売れない詩人が謳うように言うのです

青い空を書けもしないのに


「心を映す鏡ということさ」

似てない似顔絵描きが絵の具に塗(まみ)れて言うのです

青い空を描けもしないのに 


空の色が青いのは 

「レイリー散乱」とやらが浪漫を見せて心を映してくれるから・・・

ひとまずそれで良しとしましょう


それなら

空の色が青いのと海の色が青いのは

一体 如何なる由縁でしょう?

2008/10/11 (Sat)

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