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朱雀の部屋


[12] 先夜のほどろ
詩人:朱雀 [投票][編集]


後れ毛 梳くうて そっぽ向き

微かに震える伏せ睫毛
 
「辛くはないの?」と、宵の月


若やる胸に絡ませた

好きと嫌いの綴れ織り

先夜の淵に咲く花を

見ては見ぬふり 気が揉める


不意にそぼ降る涙雨

雨音(あまね)に混じる透声に

「また会えるの?」と、霽の月


濡れて濡れて泣き濡れて

ぽつんと穿(う)げた胸の奥

先夜の真星(まぼし)に散る花の

儚き影が いと悲し


知らずに漏れた 溜息が

足元(あもと)に奔り 青鈍の海

「まだ恋しいの?」と、名残月


凛と結んだ桜桃(くちびる)の

かくのみ故に 恋ひやわたらむ

先夜の果(はて)に舞う花の

物狂おしい あで姿

2008/10/11 (Sat)

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