詩人:朱雀 | [投票][編集] |
後れ毛 梳くうて そっぽ向き
微かに震える伏せ睫毛
「辛くはないの?」と、宵の月
若やる胸に絡ませた
好きと嫌いの綴れ織り
先夜の淵に咲く花を
見ては見ぬふり 気が揉める
不意にそぼ降る涙雨
雨音(あまね)に混じる透声に
「また会えるの?」と、霽の月
濡れて濡れて泣き濡れて
ぽつんと穿(う)げた胸の奥
先夜の真星(まぼし)に散る花の
儚き影が いと悲し
知らずに漏れた 溜息が
足元(あもと)に奔り 青鈍の海
「まだ恋しいの?」と、名残月
凛と結んだ桜桃(くちびる)の
かくのみ故に 恋ひやわたらむ
先夜の果(はて)に舞う花の
物狂おしい あで姿