詩人:朱雀 | [投票][編集] |
翠(すい)の竹生(たかふ)に月夜影
稲穂に似たる紫は 二目と見れぬ稀有な花
最期の時を飾らんと今を盛りと咲き満つる
風も無き夜に竹葉(たかは)が騒ぎ 月花に浮ぶ舞姿
『汝 仕舞のこの際(きわ)に何を覓(ま)ぎて此処に立つ』
葉音の影の問声(といごえ)に
答(いら)え代わりの移舞(うつりまい)
虚仮(こけ)の一心 仕似(しに)せるほどに
透影(すきかげ)の中で孛(ひろこ)へり
和魂(にきたま)宿らせ女(おな)となり
鬼を宿らせ鬼魅(きみ)となる
神に 修羅に 狂人(たぶれびと)にも成り変り
舞いて 舞いて 花を知り
偏(ひとえ)に舞いて 花を失(う)し
やがて誠の花と成る
枯れ逝く時分に見継ぐ幽玄
遺す種子(たなご)に遺念を委ね
有心を払い無心に還る
尽未来際(じんみらいさい)嵩を増し
長(たけ)を長じて 花伝となりぬ