詩人:ヒギシ | [投票][編集] |
互いの純情をぶつけ合うような
拙い恋はもう出来ないって君は言うけど
遠い記憶を大切に取り出して
懐かしみと共に憧憬を感じてる
頭で先を読むことだけが
本当に大人と言えるのか?なんて
自分に都合よく理屈こねる僕に
君はがっかりするんだろうか
傷付けたくないなんて殺し文句で
隠した本音を教えてよ
考えじゃなく気持ちが聞きたい
理論じゃなくて戯れ言が聞きたい
本気で笑ったり泣いたり
そんな風な確かな証が感じられるように
当たり前に好きで居たい
片一方だけの要求って判ってる
嫌われるのが一番怖いから取り繕ってる
でも偽りばかり増えたとして
いつかそれが見つかったとき
僕はどうなってしまうんだろうって
考えると消えてしまいたくなるよ
君の隣で朝の光に呻いて
君の腕の中に隠れてしまいたくなる
そんな事したら君は
慌てて僕を放り出すだろうね
求められればすり寄って
叫びたいのを堪えてる
そんな自分が酷く情けなくて滑稽で
それでも君が好きなのが悔しい
寝言に乗せた本音が
たとえ僕を遠ざける言葉だとしても
こんな我慢を止めさせてくれるなら
涙が零れようと笑ってさよならを言えるよ
だけどまだ傍にいたい
離れたくなくて
君の声を聞く度に
わがままばかり増えていく
君の言う理想から離れてく自分に
また一つ仮面を被せる
詩人:ヒギシ | [投票][編集] |
黒い傘を差していて気付かなかった
いつの間にか雲は白く 空は青くなり
まだ湿るアスファルトを照らしていた
姿勢の良い猫は道端で伸びをして
そのとなりを大きな葉っぱが転がった
眩しい朝はただ 窓辺で囀る小鳥を
しめやかな夜はただ 袖に絡まる風を
緩やかに明くる日へ向かうための
優しい毛布をかけ直して行っただけ
そんなことだったんだよ
詩人:ヒギシ | [投票][編集] |
ねぇ 貴方が前を向いて
逞しく向かい風をきってくのは
とても喜ばしいことだ
でも 貴方が眠れない夜に
闇の中に浮かび上がるあの子
どうにかしてあげるべきじゃないか
ほら 泣き声を聞けばわかる
ふさぎ込んだままの若い貴方だ
大人達の世界が怖いんだと
色んな事に蓋をした大人は言うが
どうだろう
子供の影に怯えちゃいないか?
幸せを祈り続ける限り
悲しみは泣き止まないって気付いた
情けない顔の自分を置き去りに
見て見ぬフリして駆けだした
ねぇ 悲しみを知らない人になって
貴方はどこへ向かうのか
安定した光の中に居ては
その光の眩しさなんてわからないだろ
でも、ほら あの子は知ってるよ
大切なことを知ってたよ
かっさらえ 幸福のスパイスだ
詩人:ヒギシ | [投票][編集] |
行き過ぎたネガティブ思考
その口は生ぬるい 澱んだ沼の底
寄り添うように重なる闇ばかりを啄んで
重く沈み込んだ泥へ首をもたげては
遙か上方煌めく水面に焦がれる
潜行する水鳥が
あんたの目を突っついた
低い悲鳴を上げて零れた泡が
濁りを越えて青い空へ向かった
あんたの身体から出たものが
憧憬の光にさらされた
棄てたこと 放れたこと
惜しむんじゃなくて
まだ間に合うから
もう一度食らい付け
目玉が光をとらえるうちに
本当に手遅れになる前にさぁ
詩人:ヒギシ | [投票][編集] |
夢の中で揺らいだ影が笑った
僕は水から首を出して
影が泡と絡み合うのを待っていた
思い切り駆け出せば呼吸は乱れて
胸が悲鳴を上げる度
そっと道端で寝転がっては
先を越す雲を数えた
卑怯にも 不器用を理由に
マイペースなペース配分
微笑んで可愛がってくれるのは
決まって他人だった
顔を出したばかりの太陽が
反対側へ沈む前に
やって来た雲が覆う前に
視界の開ける坂の上まで行きたい
夢の中で揺らいだ影は
僕の隣で笑わなかった
乱れた呼吸に絡み付くように
さり気ない鼻唄うたってった
坂道の向こうに海は見えるかな
絶壁だって構わないから転がり落ちたい
狂おしいまでの抱擁を頂戴
ゴールが見えたらハイジャンプ
詩人:ヒギシ | [投票][編集] |
明日は雨だと
確かに聞いた
干上がった地面を
早く潤して
とりどりの夏の花を
見せてくれよと
降ると聞いてから
雨乞いをした
人様の傘でバタバタと
単調に演奏して
蒸れたつま先を少しだけ
濡らしに来てよと
月を隠してく雲が
今夜は賓客に思えた
詩人:ヒギシ | [投票][編集] |
窓の外
山の向こう側に
沈んでいく
そう丸くはない月を見て
ちょうどあの山の
向こうくらい昔
道端の雑草を摘んでは
コップに水溜めて
窓辺に飾った事
何となく思い出した
道端の花は
道端で咲いていた方が
綺麗なんだと
今ではそう、
思うのだけれど
あの月くらい昔は
そんなへんな
いつの間にかの決定事項
無かったのに、と
触ると弾け飛ぶ
へんな種を思い出しながら
眠りに落ちた
弾ける夢を、
見るかもしれない
詩人:ヒギシ | [投票][編集] |
闇はいつだって背中で甘く囁いてる
ただ貴方の世界はとても騒がしく
目映い光に溢れているから、
まだそれに気付いていないだけだろう
光の射すところには必ず蔭があって
なければそれは白い虚無だよ
闇は木漏れ陽の落ちる木立の
隙間の向こう
こちらを窺いながらダンスをしてるんだ
鈴虫の声が急に途絶えて
窓から冷たい微風と共に滑り込んでくる
彼らに気を許してはいけないよ
虫はまたすぐに歌い出すのだから
詩人:ヒギシ | [投票][編集] |
まだ 触れないでくれ
頼むからソコらへん宜しく
空の高さが御機嫌の秘訣か
宇宙は広いから気を落とすな
テメェの噛んでるその爪さ
こないだまで向日葵だったかもよ
至極気楽な顔して
かなり世間ズレした事を
見晴らしのいい高台で
独りごちてる晴れた日
夕陽って球い太陽なんだよ
星はアホほど遠いんだ
こうして開いてる目玉が
この先桜になったりするんだろう
何でもないような面
前だけ見てるフリして
横目で世間の細波を
じっと睨み付けている
その場しのぎの軽はずみな言葉に
いい加減嫌気がさしてたらしい
閉じきった口は重たくなって
頭ばかりが動くようになって
畜生の日々に憧れてる頭の欠片は
高い空ばかり見上げるようになった
坂道を転がってく丸い石に
自分を重ねその後は他人を
犇めく人類を重ねてみたりして
ふと我に返るといつの間にか
下り坂は終わって空はもっと高く
草の波打つ丘を慌てて駆け上がる
風が凪げば影が揺らぐような
波打ち際で攫われるような
細くて脆い裸足のままだ
詩人:ヒギシ | [投票][編集] |
夜道を走ってくトラックの
金具が軋んで微睡みに侵入した
自分の鼓動だけで良いと
指に髪を絡ませてね
耳を塞いでしまいたい
そんな気分 持て余して
うるさいうるさいとゴネる
高く積み上げられた石が
ゆらゆら揺らいでんだ