詩人:ヒギシ | [投票][編集] |
はまり込んだ溝
もがくほど深くなり
土を押し出したのは自分
やがて蓋を閉めたのも
自分だった
上を向いて
手を伸ばせば
簡単に出られる
だけど私は悲劇のヒロイン
シェイクスピアも顔負けの
酷く悲しい物語
作り上げてみせましょう
発達しすぎた言葉達に
本能を翻弄されました
純粋な感情達は
どこに仕舞ったかしら
どうやら思い出せない
所詮はアニマルだけれど
勝手に線をひいてしまった
畜生の羨ましきこと
ご飯を食べて笑いたい
子供をもうけて還りたい
殖えすぎたお猿さん
いつから生きるのが難しくなった
本能に蓋を閉めたのは
誰だった
どうやら思い出せない
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出せなかった手紙
紙飛行機にしてみても
すぐに墜落してしまった
届きそうにないね
でも貴女は待ってるでしょう
郵便屋さんを待ちかまえて
何度も何度も訊くのだろう
まだ水たまりだった田んぼ
今では瑞々しく輝いています
風に乗って貴方の方へ
滑っていけたらいいですね
黄金色に変わる頃には
帰らなければならないけれど
飛行機雲に引っ張られて
海へ小瓶を委ねてみても
きっと波は意地悪をするんだ
カモメだって見ているだけで
人魚か何かが居たならば
割れて藻屑になるだろう
たんぽぽの種が貴女の吐息で
僕の元へ飛んでは来ないだろうか
たとえ来たとしても
僕は待ちくたびれて
とろけてしまっているかもしれない
雪解け水に混ざり込んで
貴女は呑み込んでしまうといい
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沈みゆく紅い球体を見つめ想うのです
あなたはどうしていますか
散歩にも出してもらえないと
そう言っていましたが
私が迎えに行くとしたら
あなたは窓を開けてくれるだろうか
落ちてくる雫を手に溜めて
あなたの呼び声を待っていました
あなたは私の名前を口にしたことが
数える程しかなかったでしょう
呼び慣れていないせいで
まさか私の名前を忘れましたか
どうしたことでしょう
花を手折って玄関に飾れど
それを目にする人間は自分だけです
呼ばねば誰も来ないのです
あなたも同じでしょうか
呼ばずとも人は寄り付くのでしょうね
ここに
駆けつけたくて堪らない
そんな人間が居るのを
覚えておいででしょうか
名前もろとも
お忘れですか
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昔何かを夢見た僕は
自分を信じて疑わなかった
毎日冒険を求め
雲を目指し海を目指し
近所の草原を駆け回った
隣の家の犬は
夜中になると決まって吠え出す
僕はあれが何かの叫びだと思ってた
周りの大人の言うことが
皆馬鹿らしくなって
一人思想家気取りで
真っ直ぐな針を川に垂らし
日に焼けて嘆いた
気付いたことを威張り散らし
気付かないことには反発した
もがいて足掻いて
慕うべき人にした無礼を
死んで詫びようと思った
温かい人に囲まれ
自分が幸せ者であることに
やっと気付き涙した
必死になって走っては転び
這い上がって
時には人に支えられ
今の自分があることを知っている
それと共に
蹴落として踏み台にした人も居て
死んでしまっては詫びも何も無いと
生きていないといけないこと
沢山の人への恩返しとして
生き抜いていかなければならない
と言うよりも
僕は生きていたくて
開けたばかりの美しい世界に
この身を浸しておきたくて
木の上に登ってでも
この目に焼き付けたい
まるで生まれたばかりの赤子のように
生にしがみつく
せっかくここに生まれたのだから
せっかくここを見つけたのだから
いつか君にも伝わるといい
この溢れ出る愛を
君も大地も地球も星も
感じ取ってくれるといい
この馬鹿な幸せ者を
見ていてくれるといい
花を植えよう
彷徨う君達が愛を見つけたとき
幸せが増すよう
僕が星を散りばめよう
虫けらもおいで
僕が夢見ていたのは
きっとこれだと思うから
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なんて
なんて酷い仕打ち
自殺未遂で入院なんて
笑って事後報告なんて
なんて
なんて酷い仕打ち
今までの全て
疑いだして
たった今君に
しなきゃいけないこと
約束したこと
放り出して
嘆き出すなんて
なんて
なんて酷い奴
駆け出す足を持たない僕は
差し出す手を落とした僕は
なんて
なんて酷い奴
ほら
小鳥は墜ちた
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楽園の地図は
どこかへ消えました
ただビルの屋上から
迷路を見渡すばかりです
こうして
呆けている内にも
時計の針は
進むのでしょう
時が流れるのではなく
自分が
生きているのだと
昔誰かが
言ってました
そうなのでしょう
夜風は冷たいけれど
星が綺麗だから
私は嘘を吐きました
楽園の地図は
破いたのです
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蒸し暑くて
シーツや枕も湿る夜は
月光浴をば
致しましょう
か弱い虫達が
ああも主張しているでは
ありませんか
たまには
耳を貸して差し上げましょう
どうせ
眠れないのなら
幻想的な
虫の夜を
過ごしてみるのは
如何でしょうか
この際冷たい珈琲を
お口に注いで涼みましょう
日光浴は
暑いけれども
月光浴とは
こうも素敵
さあさ
こちらに
いらっしゃいまし
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携帯ストラップの
骸骨が
今確かに笑ったんだ
そして
これは想像だけれど
こう言った
優しさに気付くには
それなりの余裕が
要るのだよ
と
壁に貼った
ポスターが
今確かに手を振ったんだ
そして
これは想像だけれど
こう言った
優しさに気付く人は
それなりに優しい人
ではないの?
と
困ったな
ミンナして
僕が言って欲しいこと
言うんだもんな
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小さい頃は僕だって
猫がコッチに来やしないかと
にゃーと鳴き真似をしたものさ
小さい頃は僕だって
魔法が使えやしないかと
色々呪文を唱えたさ
荷物を背中に積み込むために
夢や希望を落っことして
後ろを振り向けば
彼らが列をなしている
一つ一つ辿る度
ポケットに入るものなら
押し込んで
また前を向くのさ
願わくば
早く自分が大きくなって
彼らを拾って帰れますよう