夕暮れ色の貴女のその眼が見つめていたのは僕が買ったネオンの夜景なんかじゃなく街路樹の蕾だってちゃんと知っていた貴女が耳を傾けていたのは風のざわめきだとも貴女が微笑んでいたのはやっと飛び立った雛にだともちゃんと知っていたそれでも僕が貴女を掴んでいたのは貴女がその細い指で僕の袖を掴んでいたことをちゃんと知っていたから
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