詩人:なお | [投票][編集] |
嬉しそうに彼が笑うから、何も言えなくなってしまう。
ずるい彼がわざと、私から誘うように手の込んだ策略を練っていると
知っていながら、知った上で誘う。
そうすれば、彼は罪悪感を持たなくて済むから。
ただ嬉しそうな顔をして、誘いに応じればいいから。
そんな事は知っている。
そしてそんな事はどうでもいいとさえ思う。
それも策略なのだろうか?
私の中にある罪悪感を知っているのだろうか?
私の中にあるこの言いようもない感情を知っているだろうか?
想像して彼も苦しんでいる。
いや、本能で悟っている。言葉にはしない人だから。
そして、何も言わないけれど私は知っている。
だから、今日も何も知らないふりをして誘う。
何もかもいいやと自分の感情が”会いたい”に負けるから。
そして、嬉しそうな顔をして彼がやってくる。
ただ誘いに応じたふりをして。
彼も”会いたい”に負けて。