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番犬の部屋


[10] 無題
詩人:番犬 [投票][得票][編集]

たとえばの話

100個ほどの笹の舟を編んで

近所の川に浮かべるんだ

大きさはなるべく同じで頼む

舟主として蟻を一匹乗せよう

現実的には蟻はすぐに逃げるので

これは不可能な誘いなのだが

これはたとえばの話であるから

あまり気にせずに想像してほしい

笹の舟たちは同時に放ってくれ

そうだ

遅れやフライングがないように

慎重かつ平等なスタートでいこう

川面が光の粒子を反射

高い所から低い所へ

水が落ちる透明な音だけが響く

笹の舟たちはゆっくりと動く

蟻はじっと前を見つめてる

何艘かの舟は転覆し始めたが

上手く流れに乗った舟は止まらない

だが

その数は絶対的に少ないのだ

99個の笹の舟は川底に沈み

最後の最後に残った一つの舟の

小さな主は何を思うだろう

運命に選ばれた幸運を喜ぶのか

誰もいなくなった孤独さを嘆くのか

人間はどうだろうか

俺は…そうだな…

おそらく後者だ

2006/10/22 (Sun)

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