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番犬の部屋


[19] 無題
詩人:番犬 [投票][得票][編集]

煤けた天井に薄い光

髭を蓄えたマスターは寡黙

几帳面に並べられたバックバーの酒は

おそらくは彼の生涯の財産

年代物のジュークボックスから

アーノルド・ケイモンズ

彼のサックスは涙の結晶のように

不安定な呼吸と深遠さを覗かせる

テーブルにはアイレイモルトを

注いだオールドファッション・グラス

隣にはよく見掛けるプッタネスカ

彼女の指輪は今日も眠らない

今夜分のクリスタルをポケットに忍ばせ

相手を選ぶ瞳は高級さを物語るが

ミモザを飲み干したその唇は泣いていた

赤いドレスの裾に落ちない泥の跡

それは彼女の生き様そのもの

穴の空いた俺の革靴とよく似ている

しかし交差する事はないだろう

永遠の平行線がここにある

少しばかりの会話もなければ

不必要な感情すらもない

ただ流れて消える時を

冷えたグラスの水滴に預け

沈黙の暗さを味わう

2006/11/12 (Sun)

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