ホーム > 詩人の部屋 > 番犬の部屋 > 退廃的呟き (1)

番犬の部屋


[21] 退廃的呟き (1)
詩人:番犬 [投票][編集]

明け方、時計の一部から二時間が流れ消え去った
冷たい空白に肉と骨の音が響く
一億ほどの死の隊列が起き出し、こちらには見向きもせず、ただ一枚のパンとコーヒーを頬張って、急ぎ足で家から遠ざかって、自分勝手が許されない白岩の城に潜り込んでいくのを想像した
その二時間ほど前に降臨した朝日様
更に東では何時間も前に朝を麻の葉と迎えただろう
空は空で曇りを必要とせずに風と語りながら、体を持ち上げて太陽にスペースを許容する寛容さを示していた
自由を禁じた空間の圧力と一般的な倫理が、世界の始まりの暗示だ
昨日から引き続き、夜が逃げ出すまで俺はブルースに身を浸し、未来の尻尾を捕まえようとしたり、諦めて寝転がったり、注射針に注ぐ科学物質を探し回ったり、あい変わらず行方不明の夢を期待したり
偉大な思想と共に循環する歴史の輪は単純に人間の歴史で、俺はその中の脇役にもなれず、ジプシーや流民やリフュージーと同じく、ゴミの一人として扱われ、安い金で飼われ、そんな自分を嘲笑って、消費する魂は残り少ない
マンホールを掘り探る工事中の効率を計算してる人や、生ゴミと呼ばれる宝物を集めるトレジャーハンターは、差別と侮蔑と屈辱と恵みをと同時に受け取り、その日をその場しのぎの繰り返しで暮らしてる
穴だらけのアスファルトの上に零れたジュースに、生き残りの蟻は群がり、暗闇の巣に持ち帰って、おこぼれを喜んではまた旅に出るが次に帰ってこれるのは誰かを案じてる
その時俺は変わらず包丁を躍らせ、キャベツや牛肉を貪り腹にごちゃ混ぜ、金ぴかにギラリと輝きながら落ち行く太陽を見殺して、昨日の続きが始まるのを待ってる

続く

2006/11/12 (Sun)

前頁] [番犬の部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -