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番犬の部屋


[25] 退廃的呟き (5)
詩人:番犬 [投票][編集]

部屋の青いカーテンの隙間から日溜まりの欠片がポトリと落ち込んできたが、時計は未だに回らず、変わらず昼間の三日月は鋭く、コンキスタドール全世界を手中に収めた種族の憂鬱と黄昏の味は苦かった
今日は今日を終わろうとはせず、いくらかでも明日に食い込もうとするが、日めくりのカレンダーは残酷だ
朝は朝として、独立の区分が支配しなければならない人類の都合で時間は決められる
暇そうな太陽を差し置いて鳩は餌を啄み、あくびを浮かべたタクシードライバーとのリフレクション
排気ガスとスモッグにまみれた街灯は昼間も点灯したり消えたりを繰り返している
鮮やかなドレスと、高級な古着とを着こなしたレディフォックスは、腰にセックスを掲げダンスするようにステップを刻む
路地裏に入れば、打ち水と老婆の警戒心、日の当たらない場所に咲き誇る朝顔
年季の入ったステッキさえ意味を成さなくなった老人と葬式業者は仲がいい
その昼の終わり頃、つまりは夕方の赤い炎で火照った街並みに、アスファルトやガソリンの雫やクラクションで満杯のテールライトの渦に、目をくらませながら半分はきかけた靴のまま歩いていく
ジャンプを繰り返し、歴史や土地や悲しみの断崖を飛び回り、一度は落ち着いた筈の精神をもう一度飛ばす為に砕くクリスタル、スプーンの上で沸騰する苦いチョコ
サンミリアは至上の慰め、崇拝、信仰の象徴、活力は活力を生み、明日を生きる為の糧となる
ああ
闇の訪れ、人工の光源、ざわめきの洪水、ネオンはあくまで鮮やかにきらめいて、売春宿やラブホテル、ジャパゆきや立ちんぼ達の懐に金をと祈ってる
閉ざされた空の無限光年向こうの一番星は寂しそうに、存在を誇示して孤児の立場から抜け出そうとしている


続く

2006/11/12 (Sun)

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