詩人:番犬 | [投票][編集] |
生まれてからずっと
愛なんて知らずに生きてきた
人を好きになる
そんな当たり前の幸福に
俺は預かれなかったらしい
遠くで呼ぶ声はするが遠ざかる
歩みの遅さに進化の速さは辛すぎる
はっきり言えば俺は時代遅れ
誰かに気を使ったり
誰かの為に動いたり
上手になんて生きられないよ
だけどな
ある日のこと
うちに帰るとな
いつもは暗くて寒々しい部屋に
木漏れ日に似た妙に柔らかな
ライトの光粒子と気温と
テーブルにぽつねんと
温かいシチューを湛えた
大きな皿が一枚あったんだ
横にはよく知った女
赤い目のままで飲み干した
皿の底の絵柄が見えるまでに
幸せがそこにある気がしたから