ホーム > 詩人の部屋 > リコの部屋 > 鮫

リコの部屋


[51] 
詩人:リコ [投票][編集]

痺れ切らした二十代の
女体に盛るは
魚の肉では無く


誤魔化しの無い
テレキャスの生音
千切れそうな歌



丑虎の時間
寝室は
耳だけの虚像の平和

一本の橋となり
電流が脳内を行き来する



室温に溶けたあたし
女々しく
抱いてもらうの拒み


男のフリして
あの子を襲う


下は濡れずに
滝の様な脂汗
震えは
止まらず
歯がカチカチと
リズムを刻む




冷蔵庫から
薄切りレモン
取り出しかじり


嗚咽を調え




漂う不確かさに
ロックをはめる


圧力に潰され
はみ出た女々しさは
百円ライターで
燃やされた




酔いどれ役も
聖者の行進も



もはやあたしには
出来そうに無い



掲げたピースに
世間が冷笑
女を削る
男を造る



泳ぎ続けねば
死んでしまう



あたしと鮫は
よく似てる



深海は異形の群れ
海上は漁師が待ちわび

鳥肌は常時
だけれど



底へ底へ
あたしの庭へ


上へ上へ
あたしの戦場へ





五感と音を頼り
冷たく透明な母と共に



生まれ落ちたは
水の中




止どまる安息の地など



そもそも
最初から
無かったのだから





2006/03/15 (Wed)

前頁] [リコの部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -