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リコの部屋


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詩人:リコ [投票][得票][編集]

拳でグシャリ
透明紙コップ
飛び出す炭酸水
ぽとぽと
しゅわしゅわ



滴るサイダー水
思いの外妖艶だ
僕は思わず
虫歯にやられた奥歯
舌先で舐め確かめた




びしょ濡れになった
この手の趣は
いつだって
エキセントリック
いい加減過ぎて





僕は人間だと言うのに
頭を使うのが
どうやら下手らしい






空っぽ紙コップ
携えた
あの子は
傷も無いのに
包帯巻いて
僕だけが
その下に隠された
言い知れない寂しさに
気付いてた



なんて
ちょっと
傲慢かい?




あの子がわざと
大勢の前
指で弾いた
空っぽコップ


水が零れたふりした事も
それに同調する
黒い影の群れも




僕は目をこすって
何が起きてるか
何度も何度も
確かめたんだけど




どうしても
わからない
だから


この手の趣くまま



サイダー水の入った
僕の紙コップ
グシャリと
潰して見せたんだ



中身が溢れるって事



見せたかった




そしたら
あの子は
たちまち
僕が零した
炭酸水の泡になって




木材テーブルの隙間に染み込み
消えてしまった







なーんだ、
そっか。





2006/03/23 (Thu)

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