詩人:リコ | [投票][得票][編集] |
コーヒーカップの底にある都市
孤独屋の両目玉
褐色に揺れる街を見下ろす
ブレンドの香りで染み濡れた
彼の口髭が僕は好きだ
気のきいた言い回しを探して
孤独屋に向かって僕は言う
「なにもかもが多過ぎるね」
孤独屋の右腕の中に住む僕
彼を愛し彼から学び続ける
5杯目に及んだブラウンシュガー
溶けきれなかった
コーヒーカップの底
孤独屋は
僕の頭の先を使って
茶色の砂糖水の固りすくい
はみ出し物達を舐めてやる
僕はまた得意げに
言い回し
「上手く生きるより
美味く生きる方が」
ビルディングも人々も
溶けて溶けて混ざった
褐色の都市
携帯ショップの隣に置かれた
流行らない古びたジャズ喫茶
アナーキーをキーホルダーにした
若者達はガラス窓の向こう
混ざれずに
凝固した甘い無駄達を
孤独屋は
指先ですくい
丁寧に味わう
「爪が甘いよ」
僕が言う
「そうだね」
孤独屋が返す
僕はこっそり
スプーンを盗んだ