我は言葉を刻みし者。心虚ろなれども言葉をば刻む。其が言葉の我が深き処を昂ぶらせり、其が昂奮の我が望むる処を失わせり、其が失望の我が見つむる処を与えり、其が見識の我が進むる道を示せり。「さあ、濁りて吐き出す音色の中に、当に導きを生業とする台詞を、熱き黄金で白銀の書に青銅の筆持ち刻みつけよ」刻みし台詞に価値など要らぬ。語りし言葉に真理をば求めん。我は言葉を刻みし者。心虚ろなれども言葉をば刻む。今も見遥かす未だ来ぬ時の中にて…。
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