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Wの部屋  〜 投稿順表示 〜


[1] 後ろ手
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おかえり

ぼくは猫の尻尾を掴む
君は猫じゃらしを弄ぶ

君が吐いた言葉全てを
嘘だとは言わないよ
そこに本当もあったのだろう
ただ、それはそれは何て取るに足らなくて
情けないんだろうね

走る振りをしたって
全て御見通し
まだ戯れていたいんだよね

そんな顔をしてくれるな
落下の刻
ぼくが手を広げて
待っている
君は安心して、ぼくの存在を黙認すればいい
それだけだよ


ぼくは猫の尻尾を掴む
君は猫じゃらしをなくした

もう戻って来れば
ぼくは嬉しい
おかえり

2007/01/21 (Sun)

[3] 暁の子供
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暁の空

仰ぐ顔に落ちてくる
真っ赤な涙
ぼくを置いて
一人帰るあなたの背中が
霧散した時
ぼくは帰り道をなくしました
真っ赤な涙を滴らせ
滴らせ
ただそこに立って
待つだけの子供になりました

2007/01/25 (Thu)

[4] 夜中の軋み
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眠りを覚ます 足音が聞こえる 床を鳴らすいつもの音 貴方の重さの音 ああやっと帰って来たのだと 湧き出る歓喜が身体を潤す 褥の上
寝息は嘘で 瞼は閉ざし この顔にそっと触れた 冷え切った手 恍惚な手 もう私のじゃない 凍てついた光
確かに確かに 指を掴んでいたように お互いの先は見えていた筈なのに どこで狂ってしまったのかねぇ 今では 砂が零れるこの掌 他のイヌを連れて歩くくらいなら いっそ殺してくれと 言ってたけれど 失笑 できるわけがない 貴方は呟いたっけ やさしい私がすきだと 花に笑いかけて 呟いたでしょ やさしい私は 貴方を亡くすことも 痛みを与えることだって できやしない 決して できやしない
さ そろそろ ここを立ち去ってね 私 我慢できずに 目を開けてしまうよ それはダメでしょう?

2007/01/25 (Thu)

[5] 忘れ物
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足元に絡み付く
確かに絡み付いて
そしてその頃私は否と言っていた

段々と 時にだしぬけに
そんなふうに
私は大切と錯覚(あるいは一時的な恵愛か)していたあれに
また気付かされて
お前のせいでと言ってみたものの
自分のせいでと思ってみたものの
やるせなくて

薄れていくのです
どうしようもなく
忘れていくのです

証が見たくて欲しくて
私は色々画策するのです
けれども
必要も意味もなく
始めからそんなものは
すぐに
霧散していく夜中の灯であり
曲線を描く隣の忘却になり

必要なかった

忘れて忘れて忘れて忘れて忘れ続け

最後は本当に
壁に当たった金魚の様
きっと午睡の夢の様
どうでもよく
静かに
どうでもよく
消えていく
それでも私は否と言う筈がない

2007/01/25 (Thu)

[6] きぼう
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得たものなど覚えてない 失ったものは まぁ、アレだよと笑う
君は空虚だと いつも思ってるよね 君の目をみりゃあ分かるんだよ
さぁ 今から ぼくを捨てて 代わりにあの子を そのからだに詰めればいい  あの子は良い子なんだ 結構厳しいけれど それもまた可愛いんだ

そうしなきゃ
生きていけない って
知ってるくせに
何時迄も 蜘蛛の巣からぼくを睨むんじゃあないよ さぁ 早く早く 君の欲しいものが待ってるかもよ

もうね 君が
倖せになりたいと 嘆く姿をみたくない
ぼくだって

2007/01/27 (Sat)

[8] 
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泳いで
泳いで
いろんな島に辿り着く
そして
辿る
辿る

いろんな島から枝を持ち帰るものだから
いつの間にか 楽して浮いている私です
両手いっぱい
ぷか ぷか
でも
どれがどの枝だか 分からなくなってきて
一つずつ 流すのだけれど

最早それは腐って
腐ってきているのだ
あまりの腐臭に
皆 流してしまいました
ぱら ぱら
それは
何処へ行くのやら

たゆたう たゆたう
揺れる波に流されて
私まで腐臭がするの
だろうか

それは嫌だな
だって貴方に逢いに行くのだから

泳いで
泳いで
いろんな島に辿り着く私
そして
辿る
辿る

(まぁ あんたは
大海を泳いでるつもり)

また 行くので 待ってて下さい
今は選ぶのが下手なので
持てるだけ持って
行くよ

2007/02/07 (Wed)

[9] ナナオ
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ナナオ

どうかベッドを下りないでほしい
その白いシーツと戯れて 縫い留められるよう そこに横たわっていておくれよ

ナナオ

白皙の美貌は何一つ 汚れちゃあいないように見えるよ

ナナオ

白桃の味を覚えている?
まだ熟れていなかった
余り美味しくないね と
貴方は言ったね 二人で苦笑いしたね
覚えている?
ねえってば

ナナオ

もう 何も 言わせやあしない
その唇から嘔吐される言葉は
最早
私を満たしてはくれないのだ
ただ 赤い果実の心臓に 爪をぐさりと突き立てられる様

ナナオ

何よりも果敢無い
かつては愛しいと

貴方がそこに居る限り
私はこのナイフを振り上げずに済むのです

2007/02/07 (Wed)

[10] 世界+?
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私達は何時だって円環の中にいる
そこから抜け出すことは
世界から外れることだ
と誰かが言う
だったらそんな世界など
くそくらえ、だ

私達を繋ぐリングは何時だって新しい

2007/02/15 (Thu)

[11] 蒼いうた
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眠り落ちそうなからだの 端々に見る蒼い色

回転する小さな脳みそが もう疲れてしまったと 叫び 叫ぶ

吐けば吐く程 流されない汚物に塗れ 見えなくなっていくわたし

色を無くしたからだをうねうねと侵す蒼い闇
爪の間にまで染み込んで
瞬間、ゼリーに包まれたよな浮遊感
けれどもすぐに
灰色の地面を這う程の鉛がやってきて
それは乗っ取られてしまった思考のかまたり

重いので わたしはもがき平伏して
苦しみの唄を それをひとびとの足元に向かって唄い
どうしても聞かせる為に
足首を 靴さえも 掴むのですが
ひとびとはわたしの手を踏み付けて行き
というか
聞こえていない様子です

既に回らない頭と
出会いを求める指先の
バランスをもう保てない かもしれない

やすりですり潰しているよに
わたしは段々と
小さく 小さく
擦り減っていくのかもしれない
かもしれない

そうして繰り返し
唄っているわたしは何なのだよ
蒼く染まった唇は 苦い息を吐き続けて
空を仰いで わたしを甘やかす雨を焦がれて
一体 何なのだよ

だけども今は 地面を舐めて砂を飲み込んだ
束の間だけ声を休めてみたら
何だか酷く
眠たいのです

2007/03/05 (Mon)

[12] 
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あれは花
平凡な調べの 音階の上を歩く
僕の世界の前に唐突に咲いた
大輪咲きの花

呑んだ朱色の酒は 内臓から吸い上げられて
蒸気になって空気の中へ消える
僕はその向こうの花しか見えなかった

掬い取られた筈の欲望は
網をやぶって
ぽとり ぽとりと
胸に落ちてきたよ

こうして遠くから
きみを汚す僕にどうか
どうか
花びら一枚 と、
手を合わす

いつかは
その香を食べてしまいたい
とは稚拙な妄想だ
丹花のくちびるは
どの果実よりもきっと
甘いものなのだろう


正しい音階が ずれ堕ちる前に
手紙にしたためよか
劣情ごととじこめよか

花はいつまでも
綺麗で しどけなく

筆を舐める舌足らずな僕を
酔わせて 酔わせて
やわらかにとろかす

花はいつまでも
綺麗で しどけなく

2007/04/18 (Wed)

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