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矢井 結緒の部屋


[54] キッチンカルト
詩人:矢井 結緒 [投票][得票][編集]


ゴミ箱あたりで
バキッ!とラップ音

夜になると
細かいパウダーが
霧のように
白く立ち込めて
耳や目や鼻や口から
見えない無数の虫たちが
襲ってきて
喉に張り付くや
ほんの数分で
腫瘍を育んで
呼吸を困難にする

1日何度も
お風呂に入って
窒息の恐怖を
洗い流すのに
酸素が
圧倒的に足りなくて
発狂しそうな閉塞感に
理性は麻痺する
それでも
あなたの最期は
こんなものでは
贖えないほど
とてつもなく凄惨で
筆舌に尽くせないもの
だった

自ら止めた
その呼吸は
瞼を閉じ忘れたのに
4年待っても
戻っては来ない

2009/06/26 (Fri)

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