やはり僕はあの丘に帰ってゆく陽に暖められた芝生の匂い大いなる海原から吹いてくる風の中には歌があるまだ僕のこころの中に偏在する六月の想い出決して唯一の人生を浪費したわけじゃない君の幼い期待は南風ただ若かっただけじゃないそれがおのずと生まれいずるもの悦びと哀しみのこの丘に吹く風に君のもう大人びた横顔は不幸の美しさを知っているようだ
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