詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
傾きはじめた太陽が
ボンネットで屈折し
ぼくを射す
さよならを言い出したのは
ぼくで
結局のところ
決めたのは きみだから
ぼくは フラれたのだろう
車は無駄に走り続け
困り果ててまつ毛は
飛んだ
刺さっていた太陽も
明日へ消えた
またね。
と言ったけど
約束じゃなかった
さいごにキス。
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呼吸したり
成長したり
引き潮を待ったりしてたら
20億年
あっという間に過ぎた
海底では
あらゆる生物が
地球を
ぐるりとくるんでいる
さながら
生物たちは
地球に生かされている
ようにも。
ずっと
大地を踏みしめていると
思ってた
ほんとうは
ただ 地球に
持ち上げられているだけ
なのかもしれない。
また、引き潮。
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その時のぼくには
どんな光も
光 だった
高層ビルのあちこちでは
松明が焚かれ
人はそれを
空から眺めては
都会などと
よぶ
灯台ならば
向かうべき先を
教えてくれただろうか
手をのばしてみればいい
明るい場所で
ぼくたちは逢おう。
つかまえて
くれないか。
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気がつくと
きみは魚になってしまっていたので
ずっと
きみを知っていたのに
はじめて見たような気さえした
望遠鏡をのぞくと
いつも
波がよせては砕け
飛び散る
セロハン越しにそれは
琥珀となり
バラバラと
ふる
もう ぼくは
イソバナで
ほんのときどき
きみの胸びれが
かすめゆくばかり。
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どこから夢で
どこまで夢だったのか
わからない
という 朝
さざ波がたっていたので
ただ
風をさがした
前に進むための
1オンス
やがて
なにもかも
嘘だった
と。
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秒針がふるえて
ぼくは ただ
青くなってゆくばかりだ
深みが光を吸収し
かわりに
無数の粒子が
まとわりつく
探してた言葉は
どこにも見えず
たえなまく
泡
見上げると
水と空の境界線は
消えていた
いつだって
きみには
垂直でふれていたかった
だけ
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洋ナシをひとつ
手にとって、
戻した
わたしは今
シアワセです と
伝えたくなる
たとえ
嘘だとしても
洋ナシは好きじゃない、と
言った
ひと
伝えるすべもない
ので
紙コップを口にあてる
ワタシハ
イマモ
ヒトリ デ イマス。
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伸ばした腕の先の
手のひらの先の
中指の先っちょが
触れるか触れないか、
のところまで
夏が。
列車を待つ顔たち
照らす陽射しの角度を
知ってか知らずか
右へ傾く
くる夏
線香花火の終わる瞬間
誰を想い
なにを願うのだろう
世界のどこかで
かわらず
砲弾が飛び交っているであろう
その時
庭の片隅には
もぎ忘れられて
今にもぱちん、と弾けそうな
プチトマトが。