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望月 ゆきの部屋


[209] 腐った魚の眼に映るのは
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

「腐った魚の眼に映るのは、脚のないイタリア人のカウパー」


完熟トマトの夜半すぎ

蛇口をひねると
ベトベトとした
不透明な液体が流れ出た

部屋の隅々を見渡しても
5分前の明日は
どこにも見当たらない
悪いけど
さようなら

ベッドの水溜りには
一匹の魚が泳ぐ
白い布が半分まで顔を隠し
尾びれはといえば
昨日墓に埋めた

腐っても魚は食べれるの?

厚手の鍋を火にかけたまま
トマトをざくざく
胴体だけになった魚が
ドライヤーを鱗にあてる
ヴォーノ! ヴォーノ!

腐っても魚は眼が見えるの?

部屋中が浴槽になり
そこらじゅうで赤い泡
じっくりことこと
煮込んだものは 

宙に浮かぶ股間に
それは張り付いている

さかさまの蛍光灯に
手を伸ばし
蛇口をひねると
相変わらずベトベトした
不透明な液体が流れてきた

2004/05/25 (Tue)

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