詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
水槽のどじょうが
ピチャン、とはねて
しぶきは周辺を濡らす
それが 開始の合図。
眠らないモノの、
眠れないモノたち
の
するすると糸を吐き出しては
せっせと罠をしかける
ベランダの角
明日の朝
シャッターがあがるとまた
ママ、とか呼ばれてるあの女が
洗濯物を手に
舌をならしてはそれを一撃
ったく、力作だったのに
と、また夜を待つ。
チカチカは不定期に続く。
佐々木さんちのポチときたら
毎朝 毎朝
足元におしっこひっかけてくのに
大事なのは電柱だけで
見下ろすもののことなんて
きっと どうでもいいんだよなぁ。
あのママ、ってやつも。
あら、これ切れそうね、とだけ
つぶやいて、それだけ。
あぁ、やっと休憩だ。
と、顔を止める
角度も気にならない。
と、思いきや、途端に
ママ、の手が伸びてきて
また首振り始動。
こんな夜は仕方ない、とあきらめモード
なんてモードはないからタイマーモード。
期間限定で昼夜を問わず
労働中。
眠れるモノたちの
寝息を聞いている 窓
の外には 風に揺れる木々
の上には 月が浮かぶ空
の続くずっとずっと向こうでは
「もう 起きちゃいかが」
と カッコウが鳴くわけもなく鳴いて
朝。
それが 終わりの合図。