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望月 ゆきの部屋


[256] 午後、水飲み場で
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

「水、持ってこいよ。」

シンちゃんが言ったから
公園の入り口にある水飲み場まで
バケツを片手にダッシュ
焼けた砂まみれの腕に
午後の陽射しは痛い

水飲み場につくと
犬を連れたおじさんが
足を洗っている
犬の、ではない
おじさんの、だ
この暑さじゃ散歩もやってられない
とは言わないがそんなとこだろう

突然
おじさんは蛇口を上に向け
親指でその口をおさえる
とたんに水は噴射した
ぼくももちろん、辺り一面びっしょりだ
シンちゃんが遠くでにらんでる

「虹、見えるんだぞ。」

それだけ言っておじさんは
また犬の散歩をつづけた
虹は見えなかったし
シンちゃんには遅いって怒られた

10年後、バスケ部のユニフォーム着てる
水飲み場のぼく
のとなりに気になるあの娘
の体操着姿
午後の陽射しはやさしい
ふいに蛇口を親指で押さえて
ジェット噴射!
となりのあの娘の体操着は濡れて
透けた肌を隠しながらプリプリして
走り去るきみのブラジャーのライン
に向かって叫ぶ

「虹、見えるんだぞ。」

2004/07/23 (Fri)

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