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望月 ゆきの部屋


[287] ブラックボックス
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

その中に落とされたとき
から
ぼくは羽につつまれていた
するするとした感触のそれの
色を知ることもなく
カタチを知ることもなく
いつも
その中でまるくなって
ねむった


何万回もねむった頃
ぼくは
裏切りや
憎しみや
神様、などというものの存在を
知り
同時に
神様、などというものは存在しない
ということも
知った


目をひらいていると
時にはひかりが見える、こと
を知ったぼくは
ぼくを包んでいた羽の色
を知った
羽、と思っていたそれは
黒く
黒く
それは緑のごとく
黒く、
細かった
糸のように


落とされた世界は
落とされたときから
黒かった
のだろうか
そうではないのかもしれない


ひかりを知ってしまったぼくは
明るい場所を欲したりも
した
目をひらいてうごかすと
四角く
明かりがもれている
世界の外側であろうそれを求めて
その扉に
手をかけた
つぎの瞬間


手首をしめつけられる感覚で
目を覚ます

まるくなってねむる
ぼくを
知らない女
の黒い髪が
ぐるぐると巻いていた



2004/10/18 (Mon)

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