詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
わるいことがあった日は
たまごを100個
ゆでたそれの殻を
むく
そうなさい、と
むかし誰かに言われたのだ
けれど
誰だったかは
わすれた
殻をむくのは
夜じゃなくっちゃいけない
蛍光灯の下
なんてはもってのほかだ
まっくらでなくっちゃ
いけない
そんなふうにも誰かに言われたのだ
が
誰だったかは
わすれた
もしもまちがって
あかるい光の下で
殻をむいたりなんかすると
真っ白いそのカケラが
きらきらとかがやくので
思わず
ふりかけ振って食べちゃったり
ネックレスにして首にかけちゃったり
なんかしたら
それはそれは
たいへんなことになる
まっくらじゃなくっちゃ
いけないよ
と
こんこんと言っていた
わすれたと思っていた誰かは
わすれたんじゃなくて
もういないだけ
そんなことをしてると
だんだん
このまま朝がやってこない
のではないか
などと思う
わるい日が
もっとわるい日になってく
ように思う
そりゃあそうだろう
なにしろまっくらなのだし
なにしろたまごなのだから
そんなときは
もっともっともっともっと
たまごの殻をむきなさい
と
誰かは言った
だから、むく
とにかく、むく
ひたすら、むく
むく
むく
むいて
むいて
むいて
おなかがすいたなら
むいたたまごを食べなさい
と
誰かは言った
真ん中から、太陽が