詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
チワワを探しているのですが
と言ったぼくの前に
店の奥から男が出てきたかと思うと
一礼しろだの
かしわ手を二回だの
今度は二礼しろだの
と散々うるさくつきまとうので
チワワを探しているのですが
ともう一度言うと
ここには置いていないのだ
と男は半分怒り気味に面倒くさそうに言う
ペットショップをまわりつづけて
もうすでに18軒目だったぼくは
さすがに精根尽き果てていたので
それならば犬ならなんでもいいです
と言うと男はとたんに明るい顔になり
いそいそと店の奥から檻に入ったそれを持ってきて
いそいそとぼくに手渡したと思うと
代金も受け取らずに店の奥にひっこんだ
中を見ると、狛犬だった
すごい形相のままワンと泣いた
おまけも付けといたよ、
一瞬ひるんだぼくを見ていたかのように
店の奥から男が叫んだので
もう一度檻の中を見ると賽銭箱が入っていて
振ってみるとジャラジャラと鳴った
チワワとか18軒目とかかしわ手とか
もうどうでもよくなって
いそいそとぼくは店をあとにした