詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
目に見えない、時を読めるようになったのは
あのひとと次の約束をするためだった
等間隔にきざんだ目もりを
瞬間の目印にして
大きな流れの中でも
わたしたちがまた、手をとりあえるように
たとえば
木曜日、午後5時にね って
笑って手をふる
そんなふうに
そうやって
見えない、時を読んでいるあいだに
次の季節がやってきたことを
わたしも あなたも 気付かなかった
すべての季節は
ふたりの手の内にあったというのに
この瞬間の手前で
街路樹は、黄色く舞っていた
記憶や、思い出とは
なんて自由なのだろう
わたしたちはいつも
その曖昧さに救われながら
時間の波間を
ただよっている
今いる場所が、流れの途中なのだとしたら
不幸せなどと
まだ、嘆くときではない
さっきよりも 少しだけ
呼吸が澄んでいる
あのひとの手も 透きとおって
それでなくとも、見失いがちな
約束は
秒針の向かう先に用意されていて
流れていく
確実に
高い方へ、
高い方へ、