詩人:弓胡桃 | [投票][編集] |
ケーキを焼いた。
真っ白いクリームを塗ったくって、
砂糖づけの果物を中にぎっしりつめこんで、
とんでもなく甘い代物。
あなたに言った。
「食べて。」
そして言った。
「ここにずっといてね。」
あの人はとうとう出ていった。
扉は閉ざされた。
私は一人になってしまったのに、
扉の向こうではあの人が、
他の誰かと笑ってる。
泣くわけにはいかない。
私の部屋は前と同じ、
甘いにおいにあふれてる。
残していったフォークで
私はケーキを食べ始めた。
その甘さのウラで
偽善の味、がした。
あなたは私のすがるような目を何を思って見ていたの?
あなたを縛りすぎたから出ていったの?
それとも私だったから出ていったの?
場違いな甘さに自分のみじめさを思い、
帰ってきて、という言葉を飲み込む。
さみしさは永遠のように思われたが、
いばらの塊のような
このケーキを食べ終えたら
その先には何かがあると
そう信じて生きていた。
そして、
甘いにおいも消えかけたあの部屋で、
顔の光をすっかり失くした
私が
のろのると
扉、を開ける。
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あなたは
「俺にぴったりのタンポポみたいな奴だ」
って言ったけど
ごめんね
私 本当は温室育ちのチューリップだった
みんなの愛に包まれて
みんなに甘えて生きてきたんだ
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私のことを
死を選んだとか
ましてや自殺―自分を殺したなんて
意味ありげに言われても困る
私は生きるのをやめただけで
その結果そちらにいなくなっただけで
皆さんは死んだ人
特に自殺した人は
こちらで不幸になると考えていたけど
私はヘソマガリな娘だったんで
そうは思ってなかったけど
実際は全く予想外な感じで
今は淡々と暮らしてる
とか言いながら
実はここは仮初めの場所で
後で思わぬ落とし穴があるのかもしれないけど
それはそちらの世界でも同じことで
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こんな自分が嫌、
にならない自分が嫌、
にならない自分が嫌、
にならない自分が嫌、
にならない自分が…
自己愛というのは本能なのかも、
と最後に私が諦めました。
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私のいい加減な扱いにも負けず
自己主張も望まず
叫ばず
暴れず
そんな私の丈夫な体
に感謝します
私を応援し
重い犠牲を覚悟する
両親 祖父母
私を信じてくれている
友人 先生方のために
目立たずとも
誠実にやるべきことを果たします
たとえ心が弱くとも
いつだって私の心臓は力強く赤い豊かな血を送り
胃腸はどんなものでも消化してやろうと張り切り
生殖器は月に一度の贈りものを忘れないのだから
それを忘れず裏切らないよう
心も強くあらねば
と思うのです
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こんな醜く
卑怯で
小さな私
を忘れずにいてくれる
存在などいるのだろうか?
雨の中
帰る道道考えた
幻想は信じたくなくて
怪しいものは尽く潰してしまった
けれど確かに
傘を握って歩く
こんな私の所にも
雨は降ってくれていた
当たり前のように
私は忘れられていなかった