詩人:都森 善太 | [投票][編集] |
きょうの夕方に聞いた
あれは
遠くから
雷鳴のやうでした
あれは
あるいは
プロペラの音でした
爆撃機が
遺していった
忘れもののやうでした
あれは
雨も降らせずに
隣の町を
ピカピカ光らせて
忘れずに
覚えておりました
猫が狂ったやうに
しきりに
鳴くので
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昨日の私はよく飛んでいた
でも今日は飛ばない
空に嫌われたから
追いかけるのに疲れたから
よく眠れないから
本当は
もう飛べないから
青に浸かってする呼吸
見えなくなるもの
聞こえなくなるもの
同じ風景は癖になる
あの上にあった
たまらなく孤独だ
「もう変わらないって決めた」
だから
その日を想像して
ただ怖くて震えていた
変わり始めた瞬間
その朝は
いつもとやはり変わらずに
同じようで
飛べなくなると
両足にひとつの重さを
初めて感じる
それが命みたいで
ただ見下ろして泣いた
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鳴き止めた
さよならと
ひと呼吸の短さは季節
何を言おうとしたのか
知る事はないけれど
知る言葉ないけれど
もう一度だけ
呼びかける名前
まだ同じ青を忘れない
空に消えていく
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その背中を
引き留められない程
不器用ではなく
昨日書き留めた
あの言葉を
思い出せる程には
器用ではなく
ただ
全速力で
駆け抜けていく
あなたを
思い出した
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涙を下さい
空を飛ぶ事が夢だった
ある男の最期は
それはそれは
哀れで
惨めで
悲しくて
誰もそれが彼とは
気付かずに
飛ぶのも
跳ぶのも
翔ぶのも
墜ちるのも
区別がつかずに
夢を罵られる事もなく
希望を馬鹿にされる事さえ
思い出されず
想い叶わず
忘れられたままに
せめてその涙だけは
地面に墜ちる事なく
空を見上げたままで
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準備を始めた
引越しの中
少しだけ懐かしい空気を
吸ったせいで
夢を見たような気がした
忘れ欠けた
色はバラバラで
憶えて数え切れない
出来事やモノや人々は
夢の中ですら曖昧で
無くした記憶は
孤独になる
目覚めた朝の
冷たすぎる空気と
まだ暖まらない感情は
体に悪い
そんな夢を見た気がした
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マイナープラネット
まだ名前は無い感情
今日も家に辿り着かず
夜にそれていく
折り返し
冷たいコンクリート
見上げた先
また身を任せる
名前を忘れた光
灯り
点り、転々
わざと
わざと、
混ぜ合わせて
分からなくした
暗くなれば同じ色
気付かせて
あの
あの、願いは
君かボクかの差だけだ
それとも
君と僕との差だけだ
ほんの少し
少しだけ
繋がらない距離
名前を無くした惑星みたいに
ふたり分の目印
軌道を確かめたくて
さっき離した手を握りなおすよ
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昨日、
人類は滅亡したみたいだ
昔、誰か見ていた夢みたいに
呼吸はストップ
掴み損ねた夜明け、一足前
歩く見慣れた街は静かで
待合室に僕は一人で
そっと足音を残してきた
あなたはやはり一人で
あの夜にきっと何かあったに
違いないのに
メモリに融ける赤や黒
影は欠片も残さず
忘れ去った昨日
最期の人類は滅亡したみたいだ
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何処からか涌いてきた
この赤や白に僕は気付かない
いつか忘れてしまったに
違いない
待ち合わせ場所
駅のホーム
ありきたり
寄せ集めたテキスト
沢山の二人、限定
携帯電話
通話ランプ、
イルミネーション
少しだけ長くなる、夜
本当は寂しげな色彩に
僕は気付かない
例えばあの日に観た
映画のタイトルが
思い出せても
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愛に限りなく、近く
行間に、ある孤独
其所には何もかもなく
誰もいないと謂うのに
まるでそれが本物の
行間みたい、であると
心奪われたままに
所以、所詮の幻
消し方も分からず
行間をさ迷う