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[100370] 不器用パパ
詩人:人魚日和 [投票][編集]

「もしもし?」

相手は父親だった。

実家に帰りはするけどめったに口をきかない父が、

めずらしい

何事かと聞く前に

病院に行ったのか、
母親のなった病気と似た症状だ、
仕事や他の用事より優先しろ、
すぐに病院に行け、
いい病院がどこか、
などをたどたどしくしかし一方的に話続けた

圧倒されながらもじわじわ嬉しくなり唇の端が上がり、同時に母が病気のときどれだけ心配していたのかが伺えた

私が一言「行くよ」と言えばこの電話を切るのがわかった

私はあえて相槌をうち続けていた

何度も何度も話を繰り返す父

最後に私が「じゃあ、明日の朝に行くよ」と言った瞬間ホッとした声に変わった。

私が「ありがとう」を言おうとした瞬間電話は切れた。

不器用な父親の精一杯の優しさ。

よし、今日は早く寝なきゃ。

2007/04/16

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