詩人:シゲヲ | [投票][編集] |
答えは決まってなかった。
どうしようなんて決まってなかった。
そうなることも、こうなることも想像してなくて。
夢であるように何度願っても。
叶うことは二度とないと知ってしまった。
雨が降っていて。
止むことも無く、ただ降り続いた。
柔らかい雨にしたたかに打ち続けられた。
心の奥で永久に願い続けよう。
夢であるように。
これがどうしようない冗談で、夢で。
本当は描いていたような明日が訪れることを。
信じていた。
信じようとしていた。
それが出来ることの最善だったから。
「誕生日」
「うん」
「忘れてないよ」
「うん」
「だから」
だから、その言葉の後を。
聞いていられなかった。
忘れようとして忘れられないと思ったから。
カサがぽとりと落ちた。
瞳を閉じてあの日を思う。
カサを拾い上げて笑う。
泣いている顔なんて微塵も見せずに。
笑ってくれた。
二人で無理して訪れた場所は。
最後の場所。
「死んだらさ」
「死んだら?」
「……新しく生まれ変わるんだ」
だから――
今日は一番良い日――
一番好きな人に見送られながら。
その顔をこの眼にとどめながら。
「私は二つの誕生日を迎えられる」
「酷い誕生日」
君にとってはそうでも。
自身にとっては悪夢の日だった。
だからそう。
>>>続く