海が眠るその貝殻をためらいもなく拾い上げてひとは口々に語り始めるだろう春を春のための春、に何をも待たずつとめて実直に見失うだろう名もなき春を描かれ過ぎた岸辺も雪もかろうじてあるひとつの重みに凛として隠れ、さまよう目と耳にうたう生まれたばかりのうそを温めていつしか影は波音にさらわれる、風のその肉声の古い痛みがようやくほどいた諦めをやわらかな、檻知らずにおけない結晶の朝が告げている真正面から背中へと
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