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[119115] なでしこの花
詩人:秋庭 朔 [投票][編集]


ある夏の日の夕暮れ
外回りから帰り
事務所のドアを開けると
すぐに部長が
大きな声で
ぼくの名前を呼んだ。

背中を向けて
キーボードを叩いてた
彼女が、
弾かれたように
顔をあげ、
こちらを振り向いた。
まるで機械仕掛けの
おもちゃみたいだった。

君を呼んだんじゃない…

部長が生真面目な顔で
彼女に言った。

薄紅色に染まった
彼女の顔を見て
みんなが
声をあげて笑った。

あの時確かに
ぼくの中で
何かが動き始めた。


彼女は長い間
ただ待ち続け
何も求めなかった。

だから、ぼくは
全部あげたくなった
のかも知れない。

2008/01/15

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