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[138312] 
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

酷く雨が降っていたので
僕は、始め、それが雨漏りだと思った


しかし、それは油だった


家のちょうど中央に位置している柱の根本に

黒く、まあるく染み出していた

拭っても拭っても染み出すので気味が悪かったが

とりあえず放っておいた


ある日、母から電話がかかってきた


あんた、油、ちゃんとしてる?


油?
ああ、あれ
なんともならないよ


きちんとなさいよ
今のうちだからね


うるさいなぁ
忙しいんだよ

僕は、電話を切った


柱が油で溶けて沈み、少し家に歪みがでたらしく

ある日突然、扉が閉まらなくなった

嫌な予感がしてベッドを持ち上げるとやはり油が染みていた


新聞を敷き詰め、週に一度代えるのが日課になった


彼女は、ポッキーを食べながら

そうなっちゃったらもう駄目よ
貴方も沈むわよ

と、悪戯に笑っている





2009/01/23

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