ホーム > 詩人の部屋 > 過去ログ > No.139000-139999 > No.139042「雹」

過去ログ  〜 過去ログ No.139042 の表示 〜


[139042] 
詩人:そほと [投票][編集]

                 詩・曲 そほと

地元気象台の発表によれば
この時 鶏卵大の雹が観測されたらしい

急に暗くなった校庭に
白いものが跳ねて ころがった
一つ
また一つ
また一つ
二つ 三つ
けたたましい音を立て始めたのはピンポン玉ほどの雹だった
ぜんそくの予感

先生が教室の電気を点ける
いま何時間目だっけ
後頭部に潜んでいた闇がじわじわと広がって視界を侵食し始めた
ぜんそく
来た

休み時間になった
生まれて初めての大きな雹に
興奮し切った生徒達ははしゃぎまわる
一人ぼっちになるのが恐かったボクも
無理をしてはしゃぎまわる
視界が暗くなってきた
そうさ 空が真っ暗だからな
雹の白さが闇に眩しい

そこから記憶が飛んでいるんだ

先生の声だというのは分った
「 今 おかあさんを呼んだから 」

校庭を母に手を引かれて歩いていた
おんぶしてやるというのを断ったんだ
友達が見てるからね

学校が見えなくなると
母はしゃがんで背中を向けた
おんぶしてもらった
泣きたかった

今でも泣きたいのだ
ぜんそくの子供を残して死んでいった母と
同じ年になってしまったのだから
少しはいろんな事が分るから




2009/02/24

前頁] [投票する] [次頁

- 詩人の部屋 -