詩人:そほと | [投票][編集] |
詩・曲 そほと
地元気象台の発表によれば
この時 鶏卵大の雹が観測されたらしい
急に暗くなった校庭に
白いものが跳ねて ころがった
一つ
また一つ
また一つ
二つ 三つ
けたたましい音を立て始めたのはピンポン玉ほどの雹だった
ぜんそくの予感
先生が教室の電気を点ける
いま何時間目だっけ
後頭部に潜んでいた闇がじわじわと広がって視界を侵食し始めた
ぜんそく
来た
休み時間になった
生まれて初めての大きな雹に
興奮し切った生徒達ははしゃぎまわる
一人ぼっちになるのが恐かったボクも
無理をしてはしゃぎまわる
視界が暗くなってきた
そうさ 空が真っ暗だからな
雹の白さが闇に眩しい
そこから記憶が飛んでいるんだ
先生の声だというのは分った
「 今 おかあさんを呼んだから 」
校庭を母に手を引かれて歩いていた
おんぶしてやるというのを断ったんだ
友達が見てるからね
学校が見えなくなると
母はしゃがんで背中を向けた
おんぶしてもらった
泣きたかった
今でも泣きたいのだ
ぜんそくの子供を残して死んでいった母と
同じ年になってしまったのだから
少しはいろんな事が分るから