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[14306] 跡白波
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

夜の手のひらに
背中を押されて
チラチラと散らばる
港の明かりを見下ろしに
いつもここへ来る

デパートの裏の階段にすわり
わたしたちは
寄り添ったり
ときどき 無口になったりした

あなたはとても
遠く遠い夢を持っていて
よく わたしを忘れた
その間はいつも
通り過ぎる船の汽笛が
わたしの手を握ってくれた

船が行ってしまうと
いくつもの波がよせては返し
涙はそこまでつづいてのみこまれる
本当は追いかけてほしかった

そうしていつだってあなたは
涼しくたちあがり
わたしは波のことを忘れてしまう

わたしでない何かを追いかけて
わたしを忘れている間
あなたはいつも やさしい

2004/06/28

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