ホーム > 詩人の部屋 > 過去ログ > No.145000-145999 > No.145134「よりどりみどりシグナル(結)」

過去ログ  〜 過去ログ No.145134 の表示 〜


[145134] よりどりみどりシグナル(結)
詩人:矢井 結緒 [投票][編集]


古株にとって
空を自由に飛び回るのは
生まれて初めての経験
だった。
遠くに目を遣ると
先に逃げ出した新入りが
ヤツの10倍はありそうな
ヒヨドリに追われていた

「つくづく
バード・ラックな
ヤツだな」

古株は苦笑しながら
それでも新入りの野性を
信じた。

「ヤツなら生き延びる。
問題はオレ自身だ。
さて、何処に行こう?」

古株は
夕陽に赤く染まりながら
錆付いた本能だけを
頼りに西を目指した。
安全だが退屈な
あの家に戻るつもりは
一毛もなくなっていた。

交差点の人工的な
赤いシグナルが
緑色に変わるのが
眼下に見えた。
「行け」というサイン
の様な気がして
古株は更に強く
翼を羽ばたかせた。

2009/07/07

前頁] [投票する] [次頁

- 詩人の部屋 -