詩人:さみだれ | [投票][編集] |
月が地球から去って何万年後か
残り少ない子供たちの中に彼女はいた
赤ん坊の頃に見た夢を彼女は覚えているという
それは古い昔に人類が失った物語のようだった
太陽が昇ると眩しくて目を閉じちゃうのは誰?
雲は楽しそうに泳いでいるのに
花や草じゃないの
もっとおっきなもの!
あれって何て言うのかな
彼女は感じていた
この空のどこかにぽっかりと穴が開いていると
そこには星も雲も鳥も
太陽すら入らない
残り少ない大人たちは笑った
そんなものはないよ、と
優しく
けれど冷たく諭した
まだ月が地球にいた頃
あるひとりの少年が願い事をした
神様には届かなかったかもしれない
けれど月は聞き入れた
にっこりと笑って