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[175125] 小鳥と煙突
詩人:中村真生子 [投票][編集]

小鳥と煙
野にも森に春がやってきた。

小鳥は嬉しくて旅に出た。

空は青く、風は心地よく

小鳥は春を心行くまで楽しんだ。

すると大きな煙突があり

煙にむせて小鳥は苦しくなった。

小鳥は煙突に聞いた。

「どうして煙を吐いているのですか。

こんなに空が青いのに。

こんなに風が気持ちいいのに。」

煙突は答えた。

「私には灰色の空しか見えません。

私には熱風しか感じることができません。

こらえきれない悲しみを

煙と一緒に吐き出しているのです。

こらえきれない憤りを

煙と一緒に吐き出しているのです。」

小鳥はしばらく煙突に佇んだ。

それから再び旅立った。

小鳥にとって煙は

もうさっきまでの煙ではなくなった。

小鳥はほんの少し

もうさっきまでの小鳥ではなくなった。



2012/03/21

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