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[178117] 透明な風
詩人:千波 一也 [投票][編集]


陽光のまぶしさに

水の記憶はよみがえる

ゆらり、と立ち上がるそれは

わたしの肌へと染みるから

懐かしい匂い、という名の

許容がまたひとつ

こぼれ落ちる



おもいでを語れば

必ず虚偽が生まれるけれど

よほどのことがない限り

誰にもそれは裁かれない

そして、互い違いに

向こう岸を見る

そこに至れない

自分を見る



高まる熱は

低いほうへ、低いほうへと流れて

きょうも方々に風が渡ってゆく

当然わたしもその内に在り

外を向いては思いを馳せて

透明な風に置いていかれる

懐かしい言葉、の数だけ

いたまずに済むものと

そっと信じて

空に抱かれて




2012/08/23

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