詩人:香奈 | [投票][編集] |
『この歌はお好きかな?』
そういって
一番最初に聞いた
アンタの声は
少し震えてた
『誰だい?
悪いけれど、
俺は目が見え無いんだ。』
『そうかい。
じゃあこの歌を
聞いてくれ』
おいおい
俺の質問には
答えてくれないのか
随分と自己中じゃあないか
真っ暗な中で
奏でられる
メロディー
お返しに
鼻歌でもプレゼント
僕は
アンタの歌を聞いて
何かを見た気がした
今思えば
あの頃から
俺はアンタの声に惚れたんだろう
君も俺を褒めた
いやいや
アンタは及びません。
『やぁこんにちは。また会ったね』
そりゃそうさ
アンタは
ここで歌うのが
好きなんだろう?
見え無くなった
この目でも
アンタがいたいステージは
見えた気がしたんだ
『それじゃあ、私の歌を聞いてくれ』
ちょっと待ってくれ
おかしいぞ
あの時の歌じゃ
ないじゃないか
『どうして
違う歌を歌うんだ』
『今日は随分と星が綺麗だね。ほらみてごらんよ』
いいかい?
僕は目が見えないんだ
そんな事言われてもな…
いつも
僕が惚れた時の
歌を歌って欲しいと頼んだ
だが
いつもアンタは
俺のリクエストになんて
答えず
あの歌は
歌ってくれなかった
そりゃないよな