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[96080] さそりの火。に。
詩人:松尾 優月 [投票][編集]

双眼の中で、空。
一つ、また一つの星が生まれました。
いいえ、生まれ変わって。
こんどは、
激しい揺らめきではなくて。
アンタレスの激しい輝きではなくて。
誰かしらへの想いであり。
死んだ、さそりの火。でした。

帰港までの冬の空は、
散るものを隠す為に白むのではなくて、
いつかは、無音の。
知る。

それは、それぞれの、
不寝番に立って見つめ合うのかもしれません。
記憶を繋ぎ、命までの。おしまい。

私たちの中での、記憶、消えてしまいやすい生まれかわりでしかありませんでした。

蝋燭の揺らぎ、まだ遠くある街並み、すべて見える世界。見えない心の中ごとに燈るさそりの火。が、燃えている。
優しく、やさしく、なりたい。
十指を組みながら願う。
願えば願うほどに、セイタカアワダチソウが、重く、雪を背負い込み、この願いさえ、誰かしらが苦しむことなのかもしれないと、哀しむしかなかったのです。

また、揺れる。
火が揺れる。
さそりの火が、揺れる。

2007/02/12

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