詩人:千波 一也
もう、使わない言葉なら
勇気をもってさ
捨てましょ
ぽいって
昔はよく使ったんだけどな
なんて感傷にひたって
夕日のなかで微笑んで
捨ててしまいましょ
・
使った言葉は
きちんともとの場所に
戻しましょう
使うだけ使って
あと始末はひと任せなんて
いい歳をして
することじゃない
わ
・
しばらく会ってないけど
あのお言葉さん
元気かしらね
せめて
どこのどなたのお宅に
ご厄介になっているのか
わかればいいんだけど
・
あの子がね
その言葉のこと
ずいぶん前から欲しがってたのよ
そろそろ譲ってあげたらどうかしら
捨てるわけじゃないんだもの
あの子がきっと
大事にしてくれるから
おさがりってことで
どうかしら
・
ところで、あなた
期限は確かめたかしら
賞味か
消費か
しらないけどさ
永久にもてる言葉なんて
ないんだから
どこにも
・
ほこりが溜まれば
パタパタしてさ
泥がついたら
ジャブジャブしてさ
わたしのためにすることは
言葉のためでもあると思う
よ
・
ふるい
段ボールを開けたら
出てくるかもね
おもわずポッて
染まっちゃうような
けれどいとしい
ひみつの言葉が
・
ながく
ながく使っていたいなら
お手入れしましょ
疎遠すぎてはいけないわ
中毒じみても困るけど
じょうずな距離を
覚えるためにも
お手入れしましょ
言葉の
日々
の