詩人:トケルネコ
歯のない狼が言いました
「気分はツルツル噛み砕けない」
指紋のないゴリラが言いました
「未来はツルツル持ち上げれない」
眉のない虎が言いました
「視線はツルツル誰も目を合わせない」
鳩はのんびり糞を蒔き 月はひんやり刃を研いで
耳の欠けた黴パンは言いました
「娑婆は聞くに堪えない事ばかり」
四季の欠けた国は言いました
「南国だって半月で飽きるんよ」
指の欠けたトランペッターは言いました
「ヤクをやったらラリパッパー」
鳩はすっかり取り囲み 月はでっぷり赤ら顔
息を切らしたランナーが言いました
「世の中金や」
息を凝らしてシンナーを吸いました
「沈黙は金や」
胸の菩薩が微笑みました
「真実は闇や・・・」
背中の龍が緋を吹きました
「酒こそ神や!」
鳩は一斉に飛び上がり 月は一気に青褪めて
「ほなさいなら」
ヒのない顔して消えました