詩人:ひトも
その不可逆さはずるいと思う。
底に沈めた錆びた錨も、
底に沈んだ宝の箱も、
手が届かないと諦めたのに、
そのにおいがした途端、
泡みたいに浮かび上がって、
否が応でも思い出す。
水面で儚くそれは割れ、
再び沈んでゆく様を、
なすすべも無く眺めて終わる。
その一方的な不可逆性は,
どこかそうだ。夢にも似てる。
その不可逆さはずるいと思う。
底に沈めた錆びた錨も、
底に沈んだ宝の箱も、
息が続かず届かぬ日々も、
そのにおいがした途端、
足掻く私をからかうように、
否が応でも思い出す。
水面でゆっくりそれは割れ、
どこかに霞んでゆく様に、
手を伸ばしては届かず終わる。
その一方的な不可逆性は,
どこか、そうだ。あなたに似てる。