詩人:トケルネコ
カッターの刃は美しい灰色だった
今日もいたゲーセンの賢者が呟く箴言
騒がしい光に掻き消され誰もが気付けない
男はじっとモニターを見ている
まるでその奥に真の価値ある宝石が眠っているかのように
サウンドが絡まる 鼓動に挟まる
なぞった刃はそれぞれの色に溶ける
エレベーターに乗る無機質な泣き声
窓から見下ろす濁りゆく川
男が座っていた椅子に光が陰を落す
「お前は何を落とした?」
声に振り向くと誰もいない
ただ眩しくクレナイ夜が更けてゆく
彼をその日以来見た者は、いない